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再配達はなぜ有料化されないのか?(3)「ラスト1マイル」の課題と物流・商流の壁を徹底検証

問題提起や提案

こんにちは、配達員のeveryです。

配達員:「何度訪問しても不在で、なかなかお届けできない」
お客様:「タイミングを逃してしまい、再配達を頼むのが申し訳ない」

・・・物流の現場で働く中で、そんな声を耳にすることは少なくありません。

宅配運送業界の大きな課題である「再配達」ですが、これを有料化するというアイデアを耳にすることもありました。

再配達有料化なら配達員にもお客様にもよい?

もしも再配達の有料化ができれば、配達側が持ち帰って再配達を行う経済的コストも、お客様がタダで再配達を頼むことで感じる心理的コストも、適正に処理できるのではないでしょうか。

しかし、現場の視点から冷静に分析すると、その実現は「非常に困難」であり「ほぼ不可能」と言わざるを得ません。

再配達有料化はムリだという配達員every

本記事では、なぜ再配達有料化がこれほど難しいのか、その理由を今回は「物流」と「商流」の両面から徹底検証します。

1. 再配達有料化を考える「前提」

まず、再配達問題を語る上で欠かせないのが、配送コストの構造です。 物流コストを語る際、私たちは以下の2つに分けて考える必要があります。

  • 基幹輸送部分: 拠点間を運ぶ長距離輸送。
  • ラスト1マイル輸送部分: 最後の営業所からお客様の玄関先まで。

再配達という現象は、この「ラスト1マイル」の繰り返しによって発生します。

ですから、再配達料金を正しく算出するためには、このラスト1マイル部分を明確に分離することが必須なんですね。

運賃=基幹輸送+ラスト1マイル輸送

再配達の有料化や抑制を考えることは、運送業界の持続可能性において非常に重要ですので、まずはこれまでの議論の振り返りとして、以下の記事もあわせてご覧ください。

2. 運送料を「グレード化」するという発想

再配達の抑止策として、運送料を再配達の発生確率に応じて4段階のグレードに分けるという考え方を仮に提案してみましょう。

これは「有料化案」のうち「先払い方式」のひとつの形になります。

  1. 営業所止め・コンビニ止め(最安価格帯) 再配達が発生しないので再配達コストを含まない。
  2. 置き配(次に安い価格帯) 荒天時を除き再配達の可能性がかなり低いので、わずかに再配達コストを含む。
  3. 宅配ボックス(通常価格帯) サイズオーバーやボックスが埋まっている時は再配達が生じるため、その場合のコストを含む。
  4. 対面配達(最高価格帯) 不在時の再配達コストをあらかじめ含むが、受け取り側は安心できる。
営業所窓口で案内される4つの配達グレード

このグレード化は、窓口持ち込みなどの「先払い」が可能な環境であれば、非常に有効な手段となり得ます。

それは、お客様自身が配送の確実性と価格を選択できるからです。

先払いができれば「払い戻し」のメリットも

またグレード化ができれば、再配達なく配達できた場合に、先払いしていただいたラスト1マイル運送料のうちの「再配達料金分を払い戻しする」という形式も可能かもしれません。

このように「先に多めに支払いしてもらい、余ったコストは支払い戻しする」という方式を「デポジット制」などといいます。

宅配便のデポジット制の例

昔のことですが、ビン入り牛乳の販売で「空きビン」を効率よく回収するために、購入時にはビンを含んだ代金をお客様に支払ってもらっていた時代がありました。

飲んだ後の空きビンをお店に返却すると、ビンの代金がお客様に返ってくるため、ビンの回収もしやすい、という仕組みです。

この「デポジット制」がラスト1マイルの運送料に適用できれば、再配達の有料化に対してかなり整然とした解決方法になるのではないでしょうか。

・・・しかし問題はそう簡単なものではありません。

3. なぜ「ほぼ不可能」なのか?物流と商流の深い壁

実は、この仕組みをネットショッピングやカタログショッピングに当てはめようとすると、大きな壁が立ちはだかります。

システム連携という「商流」の限界

ネットショッピングにおいて、お客様が決済情報を共有するのは原則として「ショップ(ECサイト)」のみです。

運送料のグレード化を実現するためには、以下のどちらかが必要になります。

  • A:お客様がショップだけでなく、運送会社とも直接決済情報を共有する。
  • B:全ショップが、注文手続きと同時に運送会社の配送グレードを選択できるシステムを導入する。

これは単なる「物流」の改善ではなく、「商流(取引の流れ)」そのものの根本的な変更を意味します。

ショップと運送会社の連携問題

すべてのECショップや通販事業者が一斉にシステムを改修しなければなりませんが、現実にそれは困難です。

特にテレビショッピングやカタログ通販のように、コンビニ払いや振込など「アナログな決済」が残る環境では、運送会社と決済情報を共有すること自体が「ほぼ不可能」に近い状況です。

まして「海外からの輸入の荷物」となれば、まったくムリでしょう。

再配達のコスト負担に「不公平があってはならない」、あるいは再配達有料化に移行することが「企業の競争力を削いではならない」という条件を満たしながら、この巨大な商流の壁を越えるのは、現実的な解とは言えません。

4. 支払い方式が抱える現実

再配達料金の支払いを「先払い」「後払い」のどちらにするかも議論の的です。

  • 後払い: 対面配達時のみ可能(コレクトやクール便含む)。しかし、未回収リスクや事務コストが増大します。
  • 先払い: 基本的に窓口持ち込みのみ。ネットショッピングではショップ側の決済システムとの連携が必要となり、前述の商流の問題に直結します。
コレクト受け取り拒否の問題

現状の商習慣において、これらのコストを誰が、どのように負担するかを合意するのは極めて難しいのが実情です。

5. まとめ:これからの物流を見据えて

再配達の有料化は、理想として良いのかもしれません。

しかし、それを実現するためには物流業界だけではなく、日本の全小売業、そして消費者の決済に対する意識までを含めた「社会システム全体の変革」が必要です。

結論として、再配達の有料化は、現状のままでは実現が非常に困難です。

これからの物流は、有料化という極端な一手よりも、「置き配」や「宅配ボックス」といった、再配達そのものを起こさない環境、つまり「宅配荷物の受け取りインフラの整備」を、企業とユーザーが協力して進めていくことが、もっとも現実的かつ有効なアプローチではないでしょうか。

宅配ボックスのタイプ別

当ブログ『宅配便利.com』では、その「受け取りインフラの充実」をテーマにして、メーカーの宣伝文句ではなく現役配達員の視点で「これがおススメ!」「コスパ高!」と感じた【宅配ボックス】や【宅配関連商品】を紹介しています。

物流現場からの「現場の知恵」が、少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!

この記事を書いた人
every

現役で宅配便の配達員をやっているeveryです。
相棒はスズキのH26年型エブリイ。
配達員の実践経験にもとづいて、スムーズな荷物の受け取り方法を提案しています。

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